認知症・MCI
認知症・MCI

認知症とは、脳の神経細胞が障害を受けることで、記憶・判断・言語などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態の総称です。「年齢相応の物忘れ」とは異なり、以前できていたことができなくなる・同じことを繰り返す・日常生活の管理が難しくなるといった変化が特徴です。
MCI(軽度認知障害)は、認知症と正常の間に位置する状態です。物忘れや認知機能の低下は見られるものの、日常生活の基本的な自立は保たれており、認知症の診断基準は満たしていない状態です。MCIの段階で適切に対応することが、認知症への進行を防ぐうえで非常に重要です。
「最近物忘れが増えた」「以前より段取りが悪くなった」と感じたら、一人で抱え込まず、早めにご相談ください。
MCIと認知症は、どちらも認知機能の低下が見られますが、日常生活への影響の程度が大きく異なります。
MCIの段階は、適切な対応によって認知症への進行を遅らせたり、正常な状態に近づいたりする可能性があります。「まだ認知症ではないから大丈夫」と放置せず、この時期に専門医を受診することが大切です。
認知症にはいくつかの種類があり、原因・症状・進行の仕方がそれぞれ異なります。正確な種類の診断が、適切な治療・対応につながります。
最も多い認知症です。脳内にアミロイドβなどの異常なたんぱく質が蓄積し、神経細胞が徐々に障害されます。初期には直近の記憶の低下(同じことを繰り返す・最近の出来事を忘れるなど)が目立ち、ゆっくりと進行します。
脳梗塞・脳出血などの脳血管障害を原因とする認知症です。症状が段階的に悪化する「階段状の進行」が特徴です。生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)の管理が予防・進行抑制に重要です。
脳内に「レビー小体」という異常なたんぱく質が蓄積することで生じます。リアルな幻視(実際にいない人や虫が見える)・パーキンソン症状(手足の震え・歩行障害)・認知機能の変動(日によって調子が大きく変わる)が特徴的です。
前頭葉・側頭葉が萎縮することで生じます。記憶より先に、社会的なルールへの無関心・衝動的な行動・言語障害などが目立つことがあります。比較的若い年齢(65歳未満)での発症もあります。
認知症・MCIの症状は「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」に分けられます。
BPSDは本人・ご家族の双方にとって大きな負担となります。適切な対応と治療によって改善が期待できますので、一人で抱え込まずにご相談ください。
認知症・MCIの診断は、問診・認知機能検査・画像検査などを組み合わせて総合的に行います。
いつ頃から・どのような症状が・どのように進んできたかを丁寧にお聞きします。ご家族や身近な方からの情報も重要です。
MMSE(ミニメンタルステート検査)やMoCAなどの標準的な認知機能検査を用いて、記憶・注意・言語・見当識などの機能を評価します。
脳の萎縮の程度・部位や、脳血管障害の有無を確認します。認知症の種類の鑑別に役立ちます。
甲状腺機能低下症やビタミン欠乏など、治療可能な原因を除外するために行います。
近年、アルツハイマー病の早期診断に関わるバイオマーカー検査(アミロイドPETなど)も進歩しており、MCIの段階での精密な評価が可能になりつつあります。
認知症・MCIの治療は、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行います。現時点で多くの認知症は根本的な治癒が難しいため、進行を遅らせること・症状を和らげること・生活の質を保つことが治療の中心となります。
アルツハイマー型認知症に対しては、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル・ガランタミン・リバスチグミン)やメマンチンが認知機能の維持・低下抑制を目的として使用されます。また、2023年〜2024年にかけて、アルツハイマー病を背景とするMCIや軽度認知症に対する新薬(レカネマブ・ドナネマブ)が承認されており、脳内のアミロイドβを除去し進行を遅らせる効果が期待されています(対象・投与条件あり)。BPSDに対しては、症状に応じた薬を慎重に用います。
認知機能訓練(計算・読み書き・パズルなど)、有酸素運動、回想法(昔の思い出を語り合う療法)、音楽療法などが、認知機能の維持や気分の安定に役立つとされています。
高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満の管理、適度な運動、禁煙、社会的な交流の維持が、認知症の予防・進行抑制に重要であると多くの研究で示されています。
認知症の診断は、本人だけでなくご家族・介護者にとっても大きな転換点となります。
早い段階で診断を受けることで、本人が意思決定に関わりやすくなり、将来の生活設計(医療・介護方針など)を家族で話し合う時間を持てます。また薬物療法の恩恵も早期の方が大きいとされています。
介護は長期戦になることが多く、ご家族が疲弊しないための支援も重要です。介護保険サービスの利用・地域包括支援センターへの相談・認知症カフェや家族会への参加など、さまざまな社会資源の活用をご案内します。
認知症になっても、感情・感覚・尊厳は保たれています。「できないこと」ではなく「できること」に目を向け、本人のペースを尊重した関わりが、生活の質の向上につながります。
以下のような変化が気になる方・ご家族は、早めにご来院ください。
認知症・MCIは、早期に発見・対応するほど選択肢が広がります。「まだ様子を見よう」と思わず、気になる変化があれば早めにご相談ください。ご本人だけでなく、ご家族からのご相談も歓迎します。
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