睡眠障害
睡眠障害

睡眠障害とは、眠れない・眠りすぎる・睡眠中に異常な行動が起きるなど、睡眠に関わるさまざまな問題の総称です。日本では成人の約30%以上が何らかの不眠症状を経験しているとされており、身近な健康問題の一つです。
「眠れない夜が続く」「十分眠っているはずなのに昼間眠くて仕方ない」「睡眠が浅く疲れが取れない」——こうした睡眠の問題が続くと、日中の集中力・気力の低下・仕事のパフォーマンス低下・気分の不安定化など、生活全体に大きな影響を与えます。
睡眠障害は、うつ病・不安障害・双極性障害などの精神疾患と深く関連しており、睡眠の問題が精神症状を悪化させることもあれば、精神疾患の症状として不眠が現れることもあります。「眠れない」という悩みを軽く見ず、早めに専門医に相談することが大切です。
睡眠障害にはさまざまな種類があります。当院では以下の主な睡眠障害に対応しています。
最も多い睡眠障害です。入眠困難(なかなか眠れない)・中途覚醒(夜中に何度も目が覚める)・早朝覚醒(予定より早く目が覚め、眠れない)・熟眠困難(眠った感じがしない)のいずれか、または複数が3か月以上続き、日中の機能障害(眠気・集中力低下・倦怠感など)を伴う状態です。
十分な睡眠をとっているにもかかわらず、日中に強い眠気が繰り返し生じる状態です。ナルコレプシーは、突然強烈な眠気に襲われ眠り込んでしまう疾患で、感情が高ぶったときに筋肉の力が抜ける(情動脱力発作)などの特徴的な症状を伴うことがあります。
体内時計(概日リズム)のズレによって、社会的に求められる時間帯に眠れない・起きられない状態です。「睡眠相後退症候群」(夜遅くないと眠れず、昼頃まで起きられない)は若い世代に多く見られます。
睡眠中に呼吸が止まる・浅くなることを繰り返す疾患です。熟眠感がなく日中の強い眠気・頭痛・集中力低下が生じます。肥満・高血圧・生活習慣病との関連が深く、内科的な治療との連携が必要です。
夜間、横になったときに足がムズムズ・ジンジンするような不快感が生じ、足を動かさずにいられなくなる疾患です。眠れない原因として見落とされやすく、適切な診断と治療によって改善が期待できます。
睡眠障害の原因は多岐にわたり、複数の要因が重なって生じることがほとんどです。
不規則な生活リズム、就寝前のスマートフォン・PC使用(ブルーライト)、カフェイン・アルコールの過剰摂取、昼寝のしすぎ、騒音・光・温度など睡眠環境の問題
ストレス・不安・過度の緊張、うつ病・不安障害などの精神疾患(不眠は多くの精神疾患に合併します)
疼痛・かゆみ・頻尿・逆流性食道炎などの身体疾患、薬剤の副作用(一部の薬が睡眠を妨げることがあります)、加齢による睡眠構造の変化
脳内の覚醒・睡眠を調整する神経システム(オレキシン系・メラトニン系など)の機能異常
睡眠障害の症状は夜間の睡眠問題と、それに伴う日中の不調の両方として現れます。
睡眠障害の診断は、問診を中心に進めます。いつ頃から・どのような眠れなさが・どのくらい続いているかを詳しくお聞きします。
就寝・起床の時間、夜中に目が覚めた回数、昼寝の有無などを2週間程度記録していただくことで、睡眠パターンの把握に役立ちます。
ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)・不眠の重症度尺度(ISI)・エプワース眠気尺度(ESS)などを用いて、不眠の程度や日中の眠気を客観的に評価します。
不眠の背景にうつ病・不安障害・双極性障害などが隠れていることがあります。また、睡眠時無呼吸症候群・むずむず脚症候群など特定の睡眠障害が疑われる場合は、必要に応じて専門機関での検査(終夜睡眠ポリグラフ検査など)をご案内することがあります。
睡眠障害の治療は、種類や原因に応じて薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行います。
不眠症に対して最も有効な非薬物療法として確立されているのが、不眠の認知行動療法(CBT-I)です。睡眠に関する誤った思い込みや習慣を見直し、睡眠効率を高めるための行動・認知の改善を行います。薬に頼らず根本から睡眠を改善できる方法として、ガイドラインでも推奨されています。当院では臨床心理士・公認心理師によるカウンセリングも提供しています(自由診療)。
睡眠薬の選択は、不眠のタイプや年齢・他の疾患の有無を考慮して慎重に行います。現在は、依存性が少なく安全性が高いとされるオレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント・レンボレキサントなど)やメラトニン受容体作動薬が優先的に用いられる傾向にあります。従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬は依存・転倒リスクへの懸念から、近年は慎重な使用が推奨されています。睡眠薬は正しく使えば有効な治療手段ですが、自己判断での増量・中断は避け、必ず医師と相談のうえ調整してください。
治療と並行して、日常生活の睡眠習慣(睡眠衛生)を整えることが回復の基本です。
眠れなかった夜の翌朝も、できるだけ同じ時間に起きることが体内時計のリズムを整える最も有効な方法です。休日の寝坊も1時間以内にとどめましょう。
スマートフォン・テレビ・仕事を寝床で行う習慣は、脳が「寝床=覚醒の場所」と学習してしまい、眠りにくくなります。
就寝1〜2時間前はスマートフォン・PCのブルーライトを控え、照明を暗くして脳をリラックスモードに切り替えましょう。ぬるめの入浴・軽いストレッチも有効です。
カフェインは午後2時以降を控えることが望ましいとされています。アルコールは寝つきをよくするように感じますが、睡眠の質を低下させ、夜中に目が覚める原因になります。
どうしても眠い場合は、午後3時までに20〜30分以内の昼寝を。それ以上長い昼寝は夜の睡眠の妨げになります。
以下のような状態が続いている方は、一度ご来院ください。
睡眠の問題は「気合で治すもの」ではありません。適切な診断と治療によって、多くの場合で改善が期待できます。「眠れない」「眠りの質が悪い」とお感じでしたら、一人で抱え込まずにご相談ください。
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