双極性障害
双極性障害

双極性障害(双極症)は、気分が高揚・活発になる「躁状態(そうじょうたい)」と、気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。かつては「躁うつ病」とも呼ばれていました。
うつ状態のときはうつ病と区別がつきにくいことがありますが、双極性障害とうつ病は異なる疾患であり、治療法も異なります。そのため、正確な診断が非常に重要です。
双極性障害は、躁状態の程度によって大きく2つに分けられます。「双極Ⅰ型障害」は日常生活に大きな支障をきたすほどの強い躁状態(躁エピソード)があるタイプ、「双極Ⅱ型障害」は躁状態が比較的軽度(軽躁エピソード)であるタイプです。Ⅱ型はうつ状態が中心となることが多く、うつ病と間違われやすい点に注意が必要です。
日本うつ病学会は2023年に「双極症診療ガイドライン2023」を発表しており、当院でも最新の知見に基づいた診療を行っています。
双極性障害の原因はまだ完全には解明されていませんが、複数の要因が関係していると考えられています。
双極性障害には遺伝的な素因が関わっていることが知られています。血縁者に双極性障害の方がいる場合、発症リスクがやや高まるとされています。ただし、遺伝だけで発症が決まるわけではありません。
脳内の神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンなど)のバランスの乱れや、睡眠・概日リズム(体内時計)の調節機能の異常が関与しているとされています。
強いストレス・睡眠不足・生活リズムの乱れが、症状の引き金や悪化因子になることがあります。特に「睡眠」は双極性障害の経過に大きく影響するとされており、規則正しい睡眠習慣を保つことが重要とされています。
双極性障害では、「躁状態(または軽躁状態)」と「うつ状態」という2種類の気分の波が交互に、あるいは混在して現れます。
躁状態のときは「調子がいい」と感じることが多く、本人が受診を必要と感じにくい点が特徴です。しかし、この時期の衝動的な行動が後に大きな問題(借金・人間関係のトラブルなど)を引き起こすことがあります。
うつ状態のみが続く時期は、うつ病との区別がつきにくく、診断が難しいことがあります。「以前に躁状態や軽躁状態があったかどうか」が診断の重要な鍵となります。
双極性障害の診断は、医師による問診を中心に行われます。現在の症状だけでなく、これまでの気分の波の歴史(躁状態・軽躁状態の有無)を詳しく確認することが重要です。
本人は躁状態・軽躁状態を「調子がいい時期」として認識していることが多いため、可能であればご家族や身近な方から当時の様子を伺うことも診断の助けになります。
診断には国際的な診断基準(DSM-5)を用います。必要に応じて以下の検査を組み合わせることもあります。
双極性障害はうつ病・ADHD・境界性パーソナリティ障害などと症状が重なることがあり、慎重な鑑別が必要です。誤ってうつ病として診断され、抗うつ薬のみで治療されると、躁転(躁状態を引き起こすこと)のリスクがあるため、正確な診断が特に重要です。
双極性障害の治療は、急性期の症状を落ち着かせることと、再発を防ぐ維持療法の両方が重要です。長期的な視点での治療継続が回復の鍵となります。
双極性障害の治療では、気分安定薬(リチウム・バルプロ酸・ラモトリギンなど)や非定型抗精神病薬が中心的な役割を担います。うつ病で使われる抗うつ薬は、双極性障害では単独使用により躁転を引き起こすリスクがあるため、慎重に扱われます。薬の効果が現れるまでには時間がかかることがあり、自己判断での中断は再発リスクを高めるため、医師の指示に従って服薬を続けることが大切です。
薬物療法と並行して、心理教育(病気の正しい理解を深めること)、社会リズム療法(生活リズムを整える療法)、認知行動療法(CBT)などが有効であると報告されています。今後は臨床心理士・公認心理師によるカウンセリングも予定しております。(自由診療)。
双極性障害は再発しやすい疾患です。症状が落ち着いても、再発予防のために薬の継続が必要な場合があります。「気分が良くなったから薬をやめよう」という自己判断は再発のリスクが高まりますので、必ず医師と相談のうえ判断してください。
双極性障害とうまくつきあいながら生活するために、日常生活での工夫が重要です。
睡眠の乱れは躁状態・うつ状態どちらのきっかけにもなります。起床・就寝時間を一定に保ち、規則正しい生活リズムを維持することが再発予防の基本です。
日々の気分・睡眠・活動量を「気分日記」などで記録しておくと、波のパターンを把握しやすくなります。受診時に医師と共有することで、治療の調整にも役立ちます。
アルコールや過度な疲労・ストレスは、症状の波を引き起こしやすくします。無理のない生活設計を心がけましょう。
躁状態のときは本人が「病気だ」と気づきにくいため、周囲の方の観察とサポートが重要です。ただし、ご家族も一人で抱え込まず、医師や支援機関に相談しながら対応することをおすすめします。
以下のような状態が気になる方は、一度ご来院ください。
双極性障害は、正確な診断と継続的な治療によって、症状をコントロールしながら日常生活を送ることが期待できる疾患です。「うつっぽいがうつ病と言われたことはない」「気分の波が激しい」という方も、ぜひ一度ご相談ください。お一人おひとりの状態に合わせた治療をご提案します。
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